銀樹の大河ドラマ随想

2018年「西郷どん」伴走予定。「おんな城主 直虎」(2017)についても平行して書こうかと。

「西郷どん」1~2話視聴後のふんわり感想あれこれ<後編>

【後編】推せる部分=希望編

 さて、前編でモヤモヤと心を曇らせていた部分について言語化したので、次は特筆したいところ、今後も楽しみにできる部分について。

 

演出は凄腕だと直感

 第1回~第2回を演出されたのは、チーフ演出家の野田雄介さんでした。この方の演出というか、ドラマのまとめ方はとても好みです!素晴らしいと感じました。チーフでいらっしゃるということなので、最終回まで、全体の流れやまとまりにも期待しています。

 

 まずなんと言っても第1回。回別の感想でも書きましたけど、画面展開が良かった。テンポの良さやリズムを感じられました。で、子ども達の世界がキラキラしていて、斉彬様との場面はファンタスティック。おそらく、今後 ー あと何年か経った後でも「西郷どん」あの第1回良かったねぇ、って思い出すでしょうね。そう感じています。

 第2回はやはり個別感想で書きましたが、実は脚本上、物語の芯になる主役の心情がブレていて、それによってストーリー展開がズレていたのでした。

 (歴史の小ネタや歴史的な事件と、後からまた登場する少女、ふきを伏線的にここで出す必要性など、盛るべき要素が多くて破綻なく重ねられなかったのでしょうね。)

 それでも、見終わった直後に感じた違和感は「あー、なんかあちこち散漫だったね。あと吉之助も糸も暢気過ぎない?」程度でした。つまり、演出(と俳優さん全員の演技)でカバーできていたんだと思います。これはすごいことだと考えています。全てのピースがバチッとハマれば神回ができるはず。期待したいです。

 

セットや衣装も素晴らしい

 直前番組で紹介されていましたが、貧しさを出すためにわざとシロアリ害を受けた木材を使うなど、こだわりを持って作られたセットは素敵です。西郷家と大久保家の間に立つクスノキの存在感も良くて、主人公(小吉→吉之助)が何か考え事をするときに上がっていく屋根の上も南国らしくて良いですねー。歴代大河に負けず劣らず、今年のセットも素晴らしい。

 衣装は、今のところ島津斉彬の衣装デザインが群を抜いて素晴らしいと思いました。初回の扮装がスチームパンクのコスプレみたい、という感想がtwitterでチラホラ出てましたが、当時で多分3~40年くらい人の先を行っている、和洋折衷のスタイルがとてもオシャレです。今後も、時代や西郷どんの活躍する場が変わっていくにつれ、衣装も色々変化していくと思いますので、この点も楽しみのひとつ。

 総じて感じるのはやっぱり「NHK大河ドラマ班スタッフの努力はすごい」ということでしょうか。底力を感じました。今年もこのあたりは視聴者として心から信頼できると思っています。

 

鹿児島弁と地方色

 twitterに「迫どんの薩摩ことば講座」が不定期で上げられているなど、鹿児島の地方色PRも楽しめる部分だと思ってます。ロケ地も美しくて。

 薩摩弁(鹿児島弁)は、俳優の皆さん、とても努力していらっしゃいますよね。私たち視聴者側の聞き取りの問題は、個人差があるんで何とも言えないなぁ、という感じですが、私個人としては「字幕があればわかるかなー」という状況なので、薩摩弁を楽しみみたいと思います。この後、長州や土佐、京、江戸、もしかしたら東北などの言葉も出てくるのでしょうか。その辺の生な幕末感が見聞できたら楽しそう。

 

演技陣は盤石の安定感

 主役の鈴木亮平さんをはじめとするキャストの皆様の演技は、素直にすごいと思ってます。

 余談ですが、第2回に出てきた渡辺謙さんの着物の着こなし方がホント良かったなぁー。仙厳園(磯の御殿)のシーンで、胸の合わせをワザと緩めてざっくり着てましたよね。お父上の斉興公や弟の久光がきっちり着付けていたのと対称的に。ああいうのホント素敵。(衣装の話なのか迷いましたが、なんとなく演技・演出系かなぁと思いこちらで。)

 
個人的な注目の人物は大久保正助島津久光

 皆さん素晴らしい演技なんですけど、中でも個人的に注目してる作中人物は、西郷吉之助の親友:大久保正助(瑛太)と、島津斉彬の弟:島津久光(青木崇高)、この2人。

 大久保は、頭は良いけどちょっと癖があって、少し空気が読めなくて人づきあいが苦手なんだけど吉之助のことは大好き!という雰囲気を瑛太さんが演じることで、真面目で情熱的だけど少し抜けてる、鈴木亮平さんの吉之助との掛け合い、面白く観ることができそう。既に2話目も、2人のパートは目が引きつけられました。

 

 島津久光の方は、今は親子の対立が深刻な島津家パートの絶大な癒やしになってます。両親に愛され、異母兄のことも大好き、というボンボン育ち風味のとぼけた感じが絶妙。しかし彼は今後、西郷どんの前に立ちはだかる大きな壁となる筈なので、そのあたりの変化がどうなるか、今から楽しみな存在です。

 

今のところ脚本にはやや辛口だけど期待もあります

 そして、今のところ脚本と作劇姿勢に対して、やや厳しいことを言っている割合が多いですが、期待が全然ない訳ではありません。

 中園ミホさんの連続ドラマということで引き合いに出せば、「花子とアン」にも好きなエピソードとかパート、いくつもあったので。花子の妹かよ(黒木華)と村岡郁弥(町田啓太)のすれ違いの悲しい恋や、物語の最後の方でかよが戦災孤児たちを引き取って生きていく過程などは、今でも思い出しますし。

 物語全体がもっと動き出してきたら、良い場面も思い出になるエピソードも出てくるのではと、明るい見通しを持っています。

 2話でストーリーラインが…と苦情を述べた件も、これ、アレですからね。ドラマ内の赤山靱負(沢村一樹)と吉之助の会話で、

 赤山「吉之助、ないをどげんしたかとか?」 吉之助「おいには分かいもはん。じゃっどん…」

と、(ブレていることについての)セルフフォロー入ってます。苦肉の策なんですよねー、おそらく。まあ、これからこれから。